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東京高等裁判所 平成9年(行ケ)144号 判決 1999年4月22日

東京都新宿区大京町22番地の5

原告

アキレス株式会社

代表者代表取締役

八木健

栃木県足利市羽刈町444番地

原告

アキレスマリン株式会社

代表者代表取締役

木村浩征

原告ら訴訟代理人弁理士

久保田千賀志

平石利子

東京都千代田区霞が関3丁目4番3号

被告

特許庁長官 伊佐山建志

指定代理人

田中弘満

黒瀬雅一

玉城信一

小池隆

主文

特許庁が平成8年審判第5564号事件について平成9年4月21日にした審決を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由

第1  原告の求めた裁判

主文第1項同旨の判決。

第2  事案の概要

1  特許庁における手続の経緯

原告らは、平成2年1月17日、名称を「エアーボート」とする考案(本願考案)にっき実用新案登録出願をしたが(平成2年実用新案登録願第2786号)、平成8年2月20日拒絶査定があったので、平成8年4月18日これに対する審判請求をし、平成8年審判第5564号事件として審理された結果、平成9年4月21日「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決があり、その謄本は平成9年5月19日原告に送達された。

2  本願考案の要旨(登録請求の範囲(1)に記載された事項)

硬質船底の周囲にエアーチューブが取り付けられて成るエアーボートにおいて、

少なくとも前記硬質船底の縁部に補強帯を介在させて、前記エアーチューブと前記硬質船底とを接着して成ることを特徴とするエアーボート。

(実施例につき、別紙本願考案図面参照)

3  審決の理由の要点

(1)  本願考案の要旨は、前記2のとおりと認められる。

(2)  これに対して、原査定の拒絶理由で引用した実願昭61-79658号(実開昭62-191593号)のマイクロフイルム(引用例。本訴甲第1号証)の第1、第2図(本判決別紙引用例図面)と、5頁9行ないし8頁7行(例えば、6頁5ないし19行記載、「また、この受座5は、……埋設するようにしている。」の2重壁構造参照)には、次の事項が記載されているものと認められる。

「船底2の周囲にゴムチューブ1が取り付けられて成る複合ボートにおいて、

前記船底2の受座5に第1サポータ3を介在させて、前記ゴムチューブ1と前記船底2とを接着して成る複合ボート。」

(3)  本願考案と引用例に記載されたものとを対比すると、本願考案の「硬質船底」、「エアーチューブ」、「縁部」、「補強帯」は、引用例に記載されたものの「船底2」、「ゴムチューブ1」、「受座5」、「第1サポータ3」にそれぞれ相当し、また、本願考案の「エアーボート」は、引用例に記載されたものの「複合ボート」と軌を一にしているから、本願考案と引用例に記載されたものとは実質的に同一である。

したがって、本願考案は、本件出願前日本国内において頒布された引用例に記載された考案であると認められるから、本願考案は、実用新案法3条1項3号に規定された考案に該当し、実用新案登録を受けることができない。

(4)  なお、この審決は、原査定の拒絶の理由である考案の進歩性否定と異なり、考案の新規性否定によるものであるが、考案の新規性、進歩性を判断するには、まず単一の引用例との対比において新規性を判断し、次いで進歩性を判断するのであるから、審決と原査定の拒絶の理由は異なるものの同一の引用例に基づく理由であり、既に新規性否定について意見を述べる機会を与えている。したがって、改めて拒絶理由通知を行い、意見書を提出する必要は認めない。

(5)  よって、結論のとおり審決する。

第3  原告主張の審決取消事由

審決は、適法な拒絶理由通知がされないままにしたという手続違反に基づくものであり、また、引用例に記載のものの技術的内容を誤って認定したために本願考案との対比判断を誤り、本願考案の新規性を誤って否定したものであるから、取り消されるべきである。

1  審決取消事由1(拒絶理由通知の欠如)

実用新案法41条(本件審判につき適用される平成5年法律第26号による改正前のもの)が準用する特許法159条2項は、審判において、査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合には、新たに拒絶理由通知をしなければならないものとしている。原査定(審査)においては、本願考案に進歩性のないことを拒絶理由としているにもかかわらず、審決は新規性がないとして、原査定とは異なる理由で本件出願を拒絶すべきものとした。

審決は、前記審決の理由の要点の(2)において、引用例に記載のものにつき「受座5には第1サポータ3が接着されている」ものと認定したことになるが、原告は、このことと、同(3)の「本願考案の『硬質船底』、『エアーチューブ』、『縁部』、『補強帯』は、引用例に記載されたものの『船底2』、『ゴムチューブ1』、『受座5』、『第1サポータ3』にそれぞれ相当する」との認定を審決によって初めて知らされたものであり、これらを前堤としてした本件審判請求不成立の理由を予測することは不可能であった。

したがって、審決は、前記法条所定の手続に違反するものとして取り消されるべきである。

2  審決取消事由2(一致点の認定の誤り)

審決は、本願考案の補強帯は、引用例に記載のものの第1サポータ3に相当すると認定した。

しかしながら、本願考案においては、硬質船底の縁部に補強帯を介在させて、エアーチューブと硬質船底とを接着して構成しており、補強帯単独で、エアーチューブと硬質船底との接合部からエアーボート内部への浸水を防止できるものとなっている。

他方、仮に、引用例に記載のものの第1サポータ3が、審決認定のように本願考案の補強帯に相当するとすれば、引用例に記載のものにおいても、第1サポータ3は単独で、舷部材1と船底2との間から複合ボート内への浸水を防止できなくてはならない。しかし、引用例に記載のものでは、第1サポータ3と船底縁部との接合は、接着剤による接着によらず、ビス等の止着具による機械的固着によって行われており、複合ボート内への浸水の防止は、第2サポータ4が担っている。このため、引用例に記載のものでは、第2サポータ4なくしては、複合ボート内への浸水を防止することはできない。

また、引用例に記載のものでは、第1サポータ3は、第2サポータ4と協働して、船内への浸水を防止し、かつゴムチューブ1と船底部材2との強固な結合を確保する、という作用効果を奏する。これに対し、本願考案の補強帯は、もともと単独で機能するものであり、エアーチューブが硬質船底の縁部によって損傷するのを防止したり、エアーチューブと硬質船底との剥離を防止するという作用効果を奏する。したがって、作用効果においても引用例に記載のものの第1サポータ3は本願考案の補強帯とは異なる。

したがって、審決の上記認定は誤りである。

第4  被告の反論

1  審決取消事由1について

原告は、本願考案の進歩性を否定すべきものとした拒絶理由通知(甲第5号証)に対し、意見書(甲第7号証)において、接着関係について、「このように、引例2(引用例)では舷部材1と船底部材2とをビス等により止着するために用いる第1サポータ3と、該第1サポータと船底部材2側部とを被覆接着する第2サポータ4とを必須の構成要件とし、それによって初めて舷部材1と船底部材2との強固な一体化を実現したのであって、その構成は、本願第1、第2考案の、補強帯3a~3cや補強部材4a~4dを介して、エアーチューブ2と硬質船底1とを接着する構造とは大きく異なる。」(5頁3行ないし8行)、「以上詳述したように、硬質船底を持たない引例1のエアーボートと、硬質船底を必須の構成要件とする本願第1考案のエアーボートとでは、目的、構成、作用が全く異なる。また、舷部材(エアーチューブ)と船材(硬質船体)との間に介在させた第1サポータを止着具受に接着すると言う必然性が全くなく、舷部材と船材との固着を第1サポータに対するビス等による止着、および第1サポータと船材縁部に亙る第2サポータによる被覆接着により行われる引例2のエアーボートと、補強帯や補強部材を介してエアーチユーブと硬質船底とを接着する本願第1、第2考案とは目的、構成、作用が全く異なる。」(6頁11行ないし18行)として、本願考案と引用例に記載のものとの構成、作用の相違を挙げ、さらに、拒絶査定(甲第6号証)を受けた後、審判請求書(甲第8号証に添付のもの)で、第1サポータ3を受座5に接着するといった思想が案出される余地は引用2においては全くない旨主張し(5頁14行ないし6頁26行)、本願考案と甲第1号証の考案との構成、作用の相違を主張している。

このような原告の主張は、引用例の第1サポータ3と受座5との間の接着の有無に基づくものであり、原告は、本願考案の新規性否定の最も重要な点を、審判請求段階で具体的、かつ、的確に主張している。

したがって、審判において改めて拒絶理由を通知しないでした審決に誤りはない。

2  審決取消事由2について

本願考案は、硬質船底とエアチューブとの間に全面に補強部材を介在する構成、いわゆるサンドイッチ構成を包含するから、硬質船底とエアチューブとの間に引っ張り方向の負荷がかかったときには、硬質船底、補強帯、エアチューブの順で負荷が伝えられる。そして、引用例に記載のものでは、第1サポータ3のT型の垂直部分の右側(アルミニウム板10と接触する面)を除いてすべての接合面が接着剤又はシーラによって接着されているから、船底部材2と舷部材1との間に引っ張り方向の負荷が働いたとき、船底部材2、内張り9、受座5、第1サポータ3上辺部、舷部材1の順で負荷は伝達されるから、本願考案の補強帯の作用と同等である。

また、本願考案と引用例に記載のものとは、以下のとおり、損傷を防いだり剥離を防止するという作用効果も同一である。

すなわち、引用例に記載のものの第1サポータ3は、アルミニウム合金等から成る硬質の船底部材2の縁部が、舷部材1に直接接触しないように、本願明細書の第1図(C)(別紙本願考案図面の(C))と同様、縁部の一部である受座5の先端よりもさらに伸びて舷部材1を覆っており、しかも、引用例の「このゴムチューブ製舷部材1には、通常舷部材1と同一材料によって形成される第1サポータ3と第2サポータ4とが接着されている。」(7頁13行ないし16行)との記載から、第1サポータ3はゴムから成っており、舷部材1の保護層となっているものということができるから、第1サポータ3が、船底部材2の先端である硬質の縁部によって損傷するのを防止しているのは明らかである。そして、引用例に記載のものの舷部材1と第1サポータ3との間及び第1サポータ3と船底部材2(その縁部である受座5)との間は、接着剤又はシーラによる接着が行われているため、引用例に記載のものでも、舷部材1と船底部材2との間の剥離を防止する作用効果を奏する。

したがって、本願考案と引用例に記載のものとが同一であるとした審決の認定、判断に誤りはない。

第5  当裁判所の判断

取消事由2について判断する。

(1)  甲第3号証(本件願書)によれば、本願考案は、

「硬質船底の周囲にエアーチューブが取り付けられたエアーボートにおいて、エアーチューブの硬質船底の縁部との当接部における損傷を防止すると共に、エアーチューブと硬質船底との接触面の剥離を防止するエアーボートを提供すること」(本願明細書6頁6行ないし11行)

を目的として、登録請求の範囲の請求項(1)に記載された構成を採用し、これにより、

「運搬・保存時において、エアーチューブの硬質船底の縁部との当接部に何らかの外力が働いたり、エアーチューブのエアーが甘い場合において、前記当接部に何らかの応力が働いたとしても、……(補強帯が)前記応力を分担して吸収するので、エアーチューブの前記当接部に損傷が生じることはなく、従ってエアー洩れも生じない。

また、エアーボートの接岸時等において、何らかの原因でエアーチューブが岸壁等に強く当たった場合において、エアーチューブの側端が潰れて変形し、硬質船底の縁部に、エアーチューブと船底とを剥離させようとする剥離応力が加わっても、……(補強帯が)前記剥離応力を負担するので、前記剥離が生じることはなく、従って、エアーボート内への浸水も防止される。

更に、エアーチューブと硬質船底との接触が強固であり、剥離は生じにくく、エアーチューブの硬質船底の縁部との当接部に、剥離応力に基づく亀裂が生じるような状況においても、……(補強帯が)該剥離応力を負担し、上記亀裂の発生が防止される。」(14頁17行ないし15頁19行)

という作用効果を奏するものと認められる。

(2)  甲第1号証(引用例)によれば、引用例に記載された登録請求の範囲は、

「(1)少なくとも船底が剛体船材で形成され、これに弾性的な浮力体から成る舷部材を組合わせて船殻を構成する複合ボートにおいて、前記船底の少なくとも縁部を二重壁構造としてその壁内空間に止着具受けを埋設する一方該船底縁部に前記舷部材を受け支える受座を形成し、かつ該受座を前記舷部材との間で挟持しつつ前記船底縁部の一方の側壁を覆う第2サポータと該第2サポータとの間で前記船底縁部を挟持する第1サポータとを前記舷部材側に夫々設け、前記止着具受けに固着される止着具によって第1サポータを前記船底縁部に固着すると共に第2サポータを船底縁部に接着し、前記舷部材と船底部材とを接合することを特徴とする複合ボート。」

というものであり、その明細書に

「このゴムチューブ製舷部材1には、通常舷部材1と同等材料によって形成される第1サポータ3と第2サポータ4が接着されている。」(7頁13行ないし16行)、「第1サポータ3は通常T型を成し、ゴムチューブの気室中心を通る垂線上にほぼ位置するように配置されて接着され、その先端に取付け後の抜けを防止するための玉縁11が設けられている。また、第2サポータ4は船底側の受座5を舷部材1との間で挟み付け得るように舷部材1に沿って円周方向に接着されている。前記第1サポータ3は止着具7を以て船底縁部8の一方の側壁に、第2サポータ4は接着剤によって同じく他方の側壁に夫々固着されている。尚、上述の舷部材1と受座5との間及び各サポータ3、4と船底部材2との間には、通常シーラ等の充填による止水処理が施されている。

上述の船底部材2と舷部材1の連結は、舷部材1に接着されている第1サポータ3をアルミニウム板10の止水補助具で押えつつ、ビス、木ねじ、埋込みボルト等の公知の一般的なあるいは新規の止着具7をねじ込む一方、第2サポータ4を船底縁部の外側壁のFRPゲルコート面に接着することによって完了する。」(7頁18行ないし8頁17行)

と記載されていることが認められる。

(3)  引用例の上記記載によれば、引用例に記載のものの舷部材1を船底部材2に連結する態様は、舷部材1に接着されている第1サポータ3を止着具7をもって船底部材2の縁部8に固着し、第1サポータ3に接着されている第2サポータ4で船底側の受座5を舷部材1との間で挟み付け得るように、舷部材1に沿って円周方向に接着剤で接着するものであるということができるから、第1サポータ3と第2サポータ4とを一体不可分の構成として舷部材1を船底部材2に連結するものと認められる。そして、引用例に記載のものが、登録請求の範囲として第2サポータを構成に欠くことができない事項としていることは、前記のとおりである。

そうすると、本願考案が引用例に記載された考案と認められるか否かは、登録請求の範囲に構成要件として掲げられている第2サポータ4を省略し、第1サポータ3のみで、舷部材1を船底部材2に連結する構成が、引用例に記載されているに等しい考案として把握できるか否かによることになるが(原告が、引用例に記載のものでは、第1サポータ3と船底縁部との接合は、接着剤による接着によらずに、ビス等の止着具による機械的固着により行われており、複合ボート内への浸水の防止は、第2サポータ4が担っているとし、このため、引用例に記載のものでは、第2サポータ4なくしては、複合ボート内への浸水を防止することはできない、と主張しているのは、上記の点を把握できないとする趣旨の主張と理解することができる。)、以下に説示するとおり、そのように把握することはできない。

(4)  まず、引用例の考案の詳細な説明には、前記のとおり、「尚、上述の舷部材1と受座5との間及び各サポータ3、4と船底部材2との間には、通常シーラ等の充填による止水処理が施されている。」と記載されているから、引用例に記載のものは、シーラの充填による止水処理のためにも第2サポータを必須の部材として採択しているものと認められ、第2サポータを省略して第1サポータのみで舷部材1を受座5に連結する構成のものを把握することができるものではない。

被告は、「引用例に記載のものの舷部材1と第1サポータ3との間及び第1サポータ3と船底部材2(その縁部である受座5)との間は、接着剤又はシーラによる接着が行われているため、引用例に記載のものでも、舷部材1と船底部材2との間の剥離を防止する作用効果を奏する。」と主張するので検討するに、引用例は、シーラに関し、その従来例として「第3図に示すように、ゴムチューブ製舷101に接着されたコ形のフランジゴム102の溝103内にFRP製船底104の縁を差し込み、これらを貫通する締付ボルト105によって強固に固着するように設けられている(実開昭59-196、394号)。そして、フランジゴム102とFRP船底104との間には、これからの水漏れを防止するため例えばシーラの充填などの止水処理が施されている。」(甲第1号証2頁10行ないし19行)と記載するだけで、使用するシーラが接着性を有するか否かについては明らかにしていない。そして、乙第1号証(昭56-167960号公開特許公報)、第2号証(昭63-9798号公開特許公報)、第3号証(昭63-57965号公開特許公報)、第4号証(昭64-41416号公開特許公報)、第5号証(昭62-94978号公開実用新案公報)及び第6号証(平1-152851号公開実用新案公報)などによれば、シーラは接着性を有するものとして広く使われていることが認められるものの、他方、甲第10号証(JIS工業用語大辞典第2版。1987年第2版第1刷)には、「シーラー」の用語の意味について、「生地の多孔性による塗料の過度の吸収や生地からの浸出物による塗膜の劣化などの悪影響が、上層の塗膜に及ぶのを防ぐために用いる生地塗り用の塗料」と記載され、また、シーラントの用語の意味について、「継ぎ目や間隙などに充てんし、水密、気密の機能を果たす材料のうち、材料がゴムであるものを特にシーラントという。溶剤の揮散による硬化形(IIR、CSM、アクリルゴムなど)一液自然加硫形(シリコーンゴム、多硫化ゴム、ウレタンゴム、液状IIRなど)及び二液自然硫化形(多硫化ゴム、ウレタンゴム)がある。」と記載されていることが認められ、引用例に記載のもののにおけるシーラが、甲第10号証に記載されているような意味の接着性を有しないものである可能性も否定することができない。

そして、仮に被告主張のように、シーラが接着性を有し、第1サポータ3と受座5との間がシーラにより接着されているものであり、あるいは第1サポータ3と受座5が接着剤によって接着されているとしても、前示のとおり引用例に記載のものは、第1サポータ3、第2サポータ4と船底部材1との間にもシーラを充填するのであるから、その充填による止水処理のために第2サポータを必要とすることに変わりはない。

(5)  したがって、引用例の記載からは、第2サポータ4を除外して第1サポータ3のみで舷部材1を船底部材の受座5に連結する構成を把握し得るものではなく、引用例に記載された考案は、第1サポータ3及び第2サポータ4を一体不可分のものとして舷部材1を船底部材の受座5に連結するものといわざるを得ないから、この一体不可分の第2サポータ4を除外して、引用例に記載のものを本願考案と対比することはできないというべきである。

しかるに、審決は、第2サポータ4について触れることなく、引用例に記載のものの第1サポータ3のみをもって本願考案の補強帯に相当するものであると誤って認定し、これを前提にして、本願考案は引用例に記載のものと実質的に同一のものであると判断したものである。そして、上記誤りは審決の結論に影響を及ぼすものであることは明らかである。

第6  結論

よって、取消事由1について判断するまでもなく、審決は取り消されるべきである。

(平成11年4月8日口頭弁論終結)

(裁判長裁判官 永井紀昭 裁判官 塩月秀平 裁判官 市川正巳)

引用例図

公開実用 昭和62-191593

別紙本願考案図面

<省略>

第1図

<省略>

第2図

<省略>

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